「常勤先とは別に、週1〜2回アルバイトに出たい」——副業を希望する勤務医の先生は少なくありません。民間医局コネクトが実施した調査によれば、副業経験のある医師は約80%に上ります(民間医局コネクト「副業アンケート」)。しかし、転職先の就業規則が副業の可否を大きく左右することも事実です。
この記事では、副業が認められている病院を効率よく見つけるための具体的な手順と、2024年4月施行の医師の働き方改革後に押さえるべき注意点を解説します。
医師の副業は「許可制」が主流——まず現状を把握する
日本医師会調査が示す「院長許可制 48.9%」
日本医師会が実施した「医師の副業・兼業と地域医療に関する緊急調査」(2020年1月、n=3,713医療機関)によると、副業・兼業について「院長の許可がある場合のみ認める」が48.9%、「特に規定なく各医師の裁量に任せている」が30.8%でした。
「副業禁止」を明示する施設は意外と少なく、多くの病院では申請・許可のプロセスを経れば認められるというのが実態です。就業規則を一読しただけで「副業不可」と判断するのは早計なケースがあります。
公務員医師・研修医は別ルール
国立病院機構・国立大学法人・自治体病院など、国家公務員や地方公務員として雇用されている医師は、国家公務員法・地方公務員法により原則として副業が禁止されています。また初期研修医は、本業だけでも時間外労働が発生しやすく、副業先との労働時間通算で上限を超えるリスクが高いため、事実上副業が困難なケースがほとんどです。
副業OKの病院を見分ける3つのチェックポイント
① 就業規則の「副業・兼業」条項を読む
採用交渉の段階で就業規則の開示を求めることが重要です。以下の4点を重点的に確認してください。
- 「副業・兼業を禁止する」という明示的な禁止規定があるか
- 「院長(理事長)の承認を得た場合に認める」という許可制の規定があるか
- 副業先の診療科・勤務形態に制限が設けられているか
- 副業先の労働時間を本業先に自己申告する義務があるか
「禁止規定がない」=「自由に副業できる」とは必ずしも言えません。許可制の場合はどんな条件が必要かまで確認することが大切です。
② 承認実績を面接で直接確認する
就業規則の文言だけでは判断できないケースがあります。特に「承認制」の場合、実際に申請が通るかどうかは病院ごとの運用によって大きく異なります。「現在、副業をされている先生はいらっしゃいますか」と面接の場で直接聞くのが最も確実な方法です。規則上は認めているが申請実績がゼロという職場は、事実上の副業禁止と見なすべきです。
③ 求人票の「副業可」フラグを活用する
医師専門の求人サイトの一部は「副業・WワークOK」での絞り込みが可能です。この条件を最初から付けることで、条件交渉のコストを省けます。ただし求人票の記載だけを鵜呑みにせず、面接で詳細を確認する姿勢は忘れずに持ってください。
面接で副業条件を確認する質問リスト
副業の可否を確認する際は、曖昧な聞き方を避け、具体的に質問することが重要です。以下を参考にしてください。
- 「就業規則上、勤務時間外のアルバイト・非常勤勤務は認められていますか?」
- 「認める場合、申請・承認のプロセスを教えていただけますか?」
- 「副業先の診療科や勤務形態(当直・外来など)に制限はありますか?」
- 「副業先の労働時間を貴院に申告する義務はありますか?」
- 「現在、実際に副業されている先生はいらっしゃいますか?」
副業可の求人を効率よく見つける方法
転職エージェントに「副業可」を最初から必須条件として伝える
医師専門の転職エージェントは、医療機関への直接訪問・ヒアリングをもとに求人情報を保有しています。担当コンサルタントに「副業・アルバイトを継続したい」「承認が取りやすい職場を探している」と明確に伝えることで、一般公開されていない求人を含めたマッチングが可能になります。複数のエージェントに登録し、それぞれに同じ条件を伝えることで選択肢を広げる手法が効果的です。
民間クリニック・医療法人の常勤が狙い目
国立・公立病院と比べ、民間病院・医療法人は先生の働き方に対してより柔軟な傾向があります。特に中小規模のクリニックや地域密着型の医療法人は、収入補完や専門性維持を目的とした副業を理解している経営者が多く、条件交渉が通りやすいケースが多いです。転職先の候補を絞り込む段階から、設置主体(国立・公立・民間)を意識して探すと効率が上がります。
2024年4月以降の注意点——副業先の時間も通算される
2024年4月から施行された「医師の働き方改革」により、副業・兼業をする医師の労働時間管理に新たなルールが加わりました。副業先での勤務時間は、原則として本業の労働時間と通算して上限規制が適用されます。
| 水準 | 主な対象 | 時間外上限(年間・通算) |
|---|---|---|
| A水準 | 一般の勤務医 | 960時間 |
| B水準・連携B水準 | 地域医療確保のため必要な病院 | 1,860時間 |
| C-1・C-2水準 | 研修・高度技能習得中の医師 | 1,860時間 |
管理の仕組みとしては、副業先の勤務時間を医師本人が本業先に自己申告することが基本とされています(厚生労働省「医師の働き方改革に関するパンフレット」)。申告を怠ると、常勤先が上限管理の義務を果たせなくなるため、副業を開始する際は必ず常勤先の担当部署に届け出てください。
なお、副業先が労働基準監督署から「宿日直許可」を取得している場合、その施設での宿直・日直は労働時間規制の適用除外となることがあります。副業先として当直アルバイトを検討している先生は、その施設が宿日直許可を取得しているかどうかも確認ポイントの一つです。
まとめ
副業が認められている病院を探すには、次の3ステップが基本です。
- 就業規則で「禁止規定」「許可制」「申告義務」の3点を確認する
- 面接・交渉の場で承認の実績と条件を具体的に確認する
- 転職エージェントに「副業可」を最初から必須条件として伝え、非公開求人も含めて探す
また、2024年4月以降は副業先の労働時間も通算管理の対象です。転職先の水準(A/B/C)と現在の副業量を合わせて、上限時間内に収まるかを事前に確認することが不可欠です。先生の働き方の自由度を守るためにも、転職の段階で副業条件をしっかり整えておくことをお勧めします。
