医師の有給休暇、実は半数近くが年3日以下という現実——全国平均との差

先生は、去年1年間で有給休暇を何日消化したか、すぐに答えられますか。

「そう言われると、はっきり覚えていない」という先生は少なくないはずです。実際、勤務医の有給休暇取得日数を調べた公的機関の調査では、年間の取得日数が「0日」または「3日以下」と答えた医師が、全体の半数近くに上ります。全国の労働者全体の有給休暇取得率が過去最高を更新し続けている一方で、医師の現場では事情が大きく異なるようです。

💡 この記事でわかること

  • 全国平均と比較した医師の有給休暇取得の実態
  • 医師が有給を消化しにくい3つの構造的要因
  • 転職先で有給休暇の取りやすさを見極める4つのチェックポイント

全国平均は取得率66.9%・年12.1日——医師はどうか

まず、比較の物差しとなる全国の実態を確認します。

年次有給休暇 取得率(令和6年分・全産業平均)
66.9%
出典: 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」(平均付与日数18.1日、平均取得日数12.1日。昭和59年の調査開始以降で過去最高、10年連続の上昇)

政府は「過労死等防止対策大綱」で2028年(令和10年)までに取得率70%以上という目標を掲げており、66.9%はその目標まであと一歩まで迫った水準です。日本全体で見れば、有給休暇は「取れて当たり前」に近づきつつあります。

では、医師はこの流れに乗れているのでしょうか。次にその実態を見ていきます。

勤務医の有給休暇、実は半数近くが「年3日以下」という現実

独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が全国の病院に勤務する医師を対象に実施した調査では、年次有給休暇の取得日数について次のような分布が示されています。

年間の有給休暇取得日数割合
0日22.3%
1〜3日24.9%
4〜6日25.8%
7〜10日17.1%
11〜15日6.4%
16〜19日1.8%
20日以上1.7%

出典: 独立行政法人労働政策研究・研修機構「調査シリーズNo.102 勤務医の就労実態と意識に関する調査」(2011年12月実施、全国の病院勤務医を対象、有効回答3,467件)

「0日」と「1〜3日」を合計すると47.2%——実に勤務医の半数近くが、年間でほとんど有給休暇を消化できていない計算になります。全国平均の取得日数12.1日と比べると、その差は歴然です。先生自身の年間取得日数がこの分布のどのあたりに位置するか、一度振り返ってみる価値があります。

⚠️ 注意: この調査は2011年実施とやや年数が経っていますが、勤務医の有給休暇取得日数を分布で示した公的データとしては現在も引用され続けている数少ない調査です。2024年4月の医師の働き方改革以降、状況が一定程度改善している可能性はありますが、後述の通り制度自体は有給取得を直接義務付けるものではありません。

では、なぜ医師はこれほどまでに有給休暇を消化しにくいのでしょうか。その背景にある構造的な要因を整理します。

なぜ医師は有給を消化しにくいのか——3つの構造的要因

医師も労働基準法上の労働者であり、雇入れから6ヶ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤していれば、年次有給休暇が付与される点は一般の労働者と変わりません(労働基準法第39条)。制度上の権利は保障されているにもかかわらず、実際の取得が進まない背景には、主に3つの要因があります。

①当直・オンコール体制による「代わりがいない」構造

特に地方の中小規模病院や、専門性の高い診療科では、特定の医師にしか対応できない業務が集中しがちです。休むこと自体が「誰かに迷惑をかける」選択になりやすく、有給休暇の取得が後回しにされる傾向があります。

②2024年4月施行の働き方改革は「時間外労働の上限」を定めた制度

2024年4月、医師の働き方改革により時間外労働の上限規制が施行されました。原則となるA水準では時間外労働は年960時間まで、地域医療の確保のためにやむを得ずこれを超える医療機関には、都道府県の指定を受けたB水準(年1,860時間)などの枠組みが設けられています(厚生労働省)。この規制は時間外労働の「上限」を設けたものであり、有給休暇の取得そのものを義務付ける制度ではありません。時間外労働が減っても、人員体制が変わらなければ有給休暇の取りやすさは自動的には改善しない点に注意が必要です。

③「有給消化=非常識」という職場文化

年功序列的な医局文化が残る職場では、上司や先輩医師が有給休暇を取らない姿勢自体が「模範」とされ、若手が申請しづらい空気が生まれることがあります。この文化的な要因は制度改正だけでは解消されにくく、職場ごとの体質を見極める必要があります。

これらの要因は、裏を返せば「職場選び」によって変えられる部分でもあります。転職を検討する際、有給休暇の取りやすさをどう見極めればよいか、次に具体的なポイントを整理します。

転職先で有給休暇を「実際に取れるか」見極める4つのチェックポイント

求人票の給与欄や勤務時間欄と違い、有給休暇の「取りやすさ」は数字だけでは見えにくい項目です。以下の観点で確認すると、入職後のギャップを減らせます。

  • 常勤医の人数に対して、当直・オンコールの回数が特定の医師に偏っていないか(求人票の「医師数」「当直体制」欄で確認)
  • 有給休暇の年間平均取得日数を、面接時や転職エージェントを通じて開示してもらえるか
  • 不在時に外来・病棟をカバーする代診体制が整っているか(一人医長・一人体制の科でないか)
  • 有給休暇の取得に「〇日前までに申請」など過度な制約がなく、直近の急な取得にも対応できる運用か

特に「取得日数を開示できるか」は、職場が有給休暇の取得実態を把握し、改善に取り組んでいるかどうかの試金石になります。開示を渋る、あるいは即答できない職場は、有給休暇に関する管理体制自体が整っていない可能性があります。

まとめ

全国の有給休暇取得率が66.9%と過去最高を更新する一方で、勤務医の実態調査では約半数が年3日以下の取得にとどまっています。この差は、当直体制・代診の有無・職場文化といった構造的な要因から生まれており、2024年4月の医師の働き方改革(時間外労働の上限規制)だけでは自動的に解消されるものではありません。今の職場の有給休暇取得実態に納得できていない先生は、転職先を選ぶ際に「取得日数の開示」や「代診体制」を具体的に確認することが、同じ悩みを繰り返さないための第一歩になります。

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